※メガソーラービジネスより引用
富山県は豊富な水力に恵まれ、その発電量は、県内の電力需要の7割を超える。富山県企業局も公営企業として、水道事業のほか、電気事業も営んでおり、19の水力発電所で年間約518万kWhを発電している。これは約14万世帯の電力消費に当たる。
2014年3月、富山県企業局は、水力発電に加え、初めて太陽光発電所を稼働させた。出力1.75MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)「神通川浄水場太陽光発電所」だ(図1)。休止中の神通川浄水場(富山市松木)の敷地内に7248枚の太陽光パネルを敷き詰めた。年間発電量は580世帯分に相当する208万9000kWhを想定する。建設費は7億2200万円。固定価格買取制度(FIT)を利用して全量を売電し、20年間の累計で約16億円の売電収入を見込む。
図1●「神通川浄水場太陽光発電所」の完成図(出所:富山県企業局)
太陽光パネルは、施設内の空き地のほか、河川水中の不純物を沈殿させて除去する「沈殿池」の上にも設置した。沈殿池上のパネルは、設置角5度とほぼ水平に並べ、散水装置を取り付けることで、冬には雪を解かし、夏には冷却効果で発電量を増やすという特徴的な仕組みを導入した(図2)。
図2●沈殿池とその上に設置した太陽光パネル、融雪装置(散水システム)の断面図(出所:富山県企業局)
冬は融雪、夏は冷却して、発電量を増やす
敷地内に取り付けた降雪センサーによって、雪が降り出したことを検知すると、自動的に噴射ノズルから勢いよく水を吹き付ける(図3)。パネルに降った雪は、水に吹き飛ばされながら解け、水とともに下の池に流れ落ちるという(図4)。稼働してすでにひと冬を超したが、「パネルの上に雪に雪が積もることはなく、除雪作業は全く必要なかった」と、富山県企業局水道課の山本誠二主幹は、この冬を振り返る。
図3●5度に設置したアレイの上から散水する(出所:日経BP)
図4●噴射した水はパネルの下の沈殿池に流れ落ちる(出所:日経BP)
また、夏には、太陽光パネルの裏に取り付けた温度センサーが50℃を検知すると、1分間散水し3分間停止し、また1分間散水して3分間停止…という動作を、温度が50℃以下に下がるまで自動的に繰り返す。導入した結晶シリコン型太陽光パネルは、温度が上昇すると発電損失が増して、変換効率が下がるという特性を持っている。山本主幹は、「散水して温度を下げることで、変換効率が10%程度、上がる」と見ている。
20年間で8000万円も売電収入が増加
浄水場に設置したパネルを想定した散水システムは、前例がない。富山県企業局は、地元企業の協力を得ながら独自に設計した。池の上にも、他のエリアと同様、南北に横向きに4枚を配置する大面積のアレイ(パネルの設置単位)を設置した。このアレイ全体に噴水が届くように、タイプの違う2つのノズルを交互に配置した。1つはスプレー角度の狭いタイプで、幅は狭いが長い距離に水を噴射できる(図6)、もう1つはスプレー角度の広いタイプで、距離は短いが幅広く噴射できる(図7)。富山県企業局は、こうした散水システムを含めたメガソーラー設備を独自に設計し、施工事業者に仕様発注した。
図6●スプレー角度の狭いノズルは、長い距離を散水できる(出所:日経BP)
図7●スプレー角度が広いノズルは、幅広く散水できる(出所:日経BP)
散水装置の発想、素晴らしいですね!
雪にも暑さにも負けないソーラーパネル、今後も活躍が期待できそうです♪