日本経済新聞より出典
太陽光発電の急速な普及に伴い、再生可能エネルギーに併設する大型蓄電池の導入機運が高まってきた。呼び水として期待されるのが、太陽光発電の接続保留問題を受け、経済産業省が開始した「再生可能エネルギー発電事業者のための蓄電システム導入支援事業」だ。
メガソーラー(大規模太陽光発電所)などに蓄電池を併設する場合の補助金制度である。補助金の総額は265億円。補助の上限額は1件当たり5億円なので、単純計算で53ヶ所以上の蓄電池併設型の再エネ発電所が建設されることになる。
太陽光と風力発電が大量に普及した場合、その出力変動を吸収する手法は蓄電池だけではない。揚水発電のほか、地域間連系線を積極的に活用してより広域で需給バランスを維持したり、デマンドレスポンス(需要応答)によって需要側を能動的に制御したりする手法が検討される。
ただ、こうした新手法には新たな制度設計が前提になるが、太陽光の拡大スピードに制度変更が追いつ付かないのが実態だ。そこでまず、蓄電池の導入を後押しして経済性を高めることで普及を促進。電力会社による再エネの出力抑制を極力、回避する狙いがある。
■蓄電池併設でメガソーラー建設
実は、すでに政府の補助金に頼らず、メガソーラーに蓄電池を併設するケースが出てきた。
2015年4月、鹿児島県の徳之島で完成し、売電を開始した出力1.99MWのメガソーラー「御船徳之島太陽光発電所」である(図1)。不動産などを手掛ける御船ホールディングス(大阪市)が建設した。同発電所には、大型のリチウムイオン蓄電池が併設された。実証事業ではなく民間の発電事業であり、政府の補助金なしで大型蓄電池を併設した国内最初のメガソーラーとみられる。
図1 徳之島で運転開始した蓄電池併設型のメガソーラー「御船徳之島太陽光発電所」(出所:エジソンパワー)
メガソーラーと蓄電池システムを合わせた全体のEPC(設計・調達・施工)サービスは、太陽光発電システム販売のエジソンパワー(千葉県木更津市)が担当した。蓄電池システムは、韓国サムスンSDI製である(図2)。蓄電池の容量は780kWh。徳之島は離島のため、系統電力の規模が小さく、メガソーラーを接続すると、周波数が不安定になってしまう。蓄電池を活用してこうした短周期変動を抑制する。
図2 徳之島の「御船徳之島太陽光発電所」では、韓国サムスンSDI製のリチウムイオン蓄電池を採用した(出所:エジソンパワー)
九州電力は、離島にメガソーラーを設置する場合、(1)1秒当たりの出力の変化率を±5kW以内に収めること、(2)太陽光発電所が急停止した場合でも7分間は蓄電池による出力を保証すること、という制御を求めている。御船徳之島太陽光発電所では、太陽光パネル側の出力は抑制せず、蓄電池の入出力を抑制することでこれを実現する。蓄電池を併設することで、IRR(内部収益率)は低下するが、事業性は確保しているという。そもそも徳之島では、蓄電池を併設しないと、メガソーラーが建設できなかった。
※次回「事業性成立する価格で蓄電池提供」につづく・・・